授業の目的
社会科学とは,人間の社会のさまざまな面を科学的に探求する学術分野であり,社会科学の学問には経営学や経済学などがある.一方,社会と対比する概念として自然があり,自然科学に隣接した社会科学の学問には情報学や都市工学などがある.この授業では,地域の商圏・観光分析やまちづくりを題材として,地域の地理的な情報を地理情報システムと空間データベースで実際に分析しながら,都市・地域と建築空間の造形にかかわる数理モデルを学ぶ.合理的な数理モデルと社会で実際に観測されたデータの分析結果に基づいて,都市を暮らしやすくする効果的な提案ができるようになる.
到達目標
- 地理情報システムで地域の商圏や観光を分析できる
- 数理モデルに基づいて合理的な施設配置ができる
- 空間データベースでまちの利便性や安全性を分析できる
- 数理モデルに基づいて効率の良い通路と施設設計ができる
授業の概要
都市とは,人が多く集まって政治・経済・文化の中心になっている場所であり,その規模の大小は問わない.現在目に見える都市やその住人に関わる諸々のことは,自然法則のみによって決まった訳ではなく,これまでの人間社会の歴史の帰結である.社会を改善する取り組みには,日常を支えるために短期的に対処すべきものと,都市の構造や地域・建築物のあり方といった基礎的なことから中・長期的に手を打つべきものがある.中・長期の取り組みは高い効果が期待できる一方で費用が高額になりやすいので,実施前に十分な説明が求められる. しかし,都市の構造や地域・建築物に関するデータは大量に存在するだけでなく,さまざまな形式で記述されており,さらに空間的に分布していて取り扱いが煩雑になるため,状況把握や分析を行うのに多くの手間がかかる.また,都市の構造に手を入れたり新たな建築物を建てることが人々の幸せにどれだけ貢献するのかを明らかにすることは,さまざまな要因が絡み合うために容易ではない.
そこで,まず地図と地域の情報を結合して分析できる地理情報システムで商圏と観光の分析方法を学び,次に複数のデータを容易に連携できる空間データベースで便利で安全なまちづくりの分析方法を学ぶことにする.理解を深めると共に使いこなす力を伸ばすためにコンピュータによる実習をメインとするが,複雑な現実世界から本質をシンプルに取り出して合理的な打ち手を検討できるようにするため,公平な施設配置や,効率の良い通路・施設設計を行う数理モデルも実習の合間で学べるようにする.この授業で学んだ分析方法と数理モデルを駆使して,学生自身で実データを分析して都市を暮らしやすくする提案を考え,その提案の内容,効果,誰にとってどのように役立つのかを報告する.